• 福島県いわき市の行政書士事務所です。

「大切な家族にきちんと財産を残したい」というのは多くの人の共通した思いだと思います。

しかし、相続税や贈与税の決まりがよく分からず、生きているうちに贈与した方がよいのか、それとも亡くなった後に相続してもらった方がよいのか悩まれる方も多いのではないでしょうか?

今回は、相続税に関するあくまで基本的、一般的な内容を説明させて頂きます。

※より詳しい情報を得たい場合は、税理士さんなどに相談されることをお勧めします。

遺言書作成や遺産分割協議を行う場合などに参考にして頂ければ幸いです。

初めに…すべての人が相続税を払うわけではありません

相続で遺産を受けついだとき、その遺産に課税される税金を「相続税」といいます。相続税は各相続人が相続財産の割合に応じて納付します。遺贈(いぞう・主に遺言書により財産を贈与すること)、死因贈与(しいんぞうよ・「私が死んだら、○○をあげる」というような死亡した時点で効力が生まれる約束のこと)で得た財産にも相続税が課せられます。

しかし、一律に差し引かれる「基礎控除(きそこうじょ)」というものがあり、受け継いだ遺産の総額が基礎控除以下なら、相続税の申告と納付はしなくてもよいことになっております。

相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)

※この額より相続財産が多ければ、相続税の申告をする必要があります。

(例)相続人が配偶者1人…3,600万円、配偶者と子2人…4,800万円

相続税申告の流れ

1.相続した遺産を評価し、金額化します

2.マイナス分の財産(借金やローン)、葬儀・医療費用などの控除もあわせて集計します

3.課税価格から基礎控除額を差し引き、「課税遺産総額」をだします。

※もし差し引いた額が基礎控除額以上の場合⇒以下の(4~7)手続きを行います。

4.相続人ごとに相続税額を計算します。

5.配偶者控除、未成年者控除、基礎控除などさまざまな控除を差し引きます。

6.支払額が決定したら、被相続人が亡くなってから10か月以内に相続人全員で申告と納税を行います。

7.現金での一括納付が難しい場合は、分割や物納の申請を行います。

それでは、以下の項目で詳しく説明していきます。

相続税のかかるもの、かからないもの

遺産には、相続税のかかる課税財産とかからない非課税財産の2つがあります。そして、相続税を算出するには、税金の対象となる「課税価格」を確定させる必要があります。

課税価格=相続税のかかる財産-(相続税のかからない財産+債務+葬儀費用)

相続税がかかる遺産

相続・遺贈で得た財産…土地・建物などの不動産、株式、預貯金、現金、貴金属、骨董、書画、自動車など、現金に換算できるすべてのものです。

みなし相続財産…被相続人の死亡によって相続が生じる財産のことをいいます。(例)生命保険金、死亡退職金、定期金(年金)など。生命保険金と死亡保険金は、受取人が法定相続人の場合、「500万円×法定相続人の人数」が非課税となります。

生前贈与財産…生前贈与は、年110万円以下であれば、贈与税はかかりませんが、被相続人が亡くなる前、3年以内のものは課税の対象になります。ただし、贈与税の配偶者控除の適用を受けたものは控除されます。

相続税がかからない財産

祭祀(さいし)関係など…墓地、墓石、仏壇などの祭祀関係、心身障害受給金、公益法人への寄付金など。

債務…借入金、未払い金、国税、地方税、所得税、固定資産税、医療費などは債務控除の対象です。

葬式費用…葬儀料、火葬埋葬料、お布施や戒名料など。

では、相続税申告の手続きにはいります!

1.遺産の目録をつくり金額化します

まずは、相続税の対象となる財産の評価額を調べてみることをお勧めいたします。具体的には①不動産(宅地・家屋・借地権など)、②生命保険金・生命保険契約に関する権利、③個人年金等の定期金、④株式、⑤公社債、⑥ゴルフ会員権や書画・骨董品、⑦その他の財産(預貯金・自動車・債権(ローン)など)に分けてリストを作ってみましょう。

なお、相続税の課税対象となる財産の価格は、基本的に、相続・遺贈・贈与によって財産を取得した時点(例えば、相続や遺贈の場合には被相続人が死亡した日、贈与の場合には贈与契約などによって財産を取得した日)の価格で評価されます。

さて、評価額の調べ方ですが、不動産に関しては、納税通知書をもとにして、不動産が所在する市町村の役場で「固定資産税評価証明書」(資産に関する証明書)を、法務局で「全部事項証明書」(不動産登記簿謄本)を取得してしらべます。金融資産に関しては、銀行などで残高証明書を発行してもらいます。

なお主な財産ごとの評価方法は以下の通りです。

・普通預金…被相続人死亡日の残高

・宅地…路線方式の場合(1㎡当たりの路線価×宅地面積)、倍率方式の場合(固定資産税評価額×倍率)

・借地権…通常の土地評価額×借地権割合

・貸宅地…自宅地としての評価額×(1-借地権割合)

・家屋…固定資産税評価額

・貸家…固定資産税評価額×70%

・自動車…下取り査定価格

2.相続総額を出す

ここでは、夫が亡くなり、配偶者と子ども2人(長男21才・長女18才)が法定相続分で分けるケースで計算してみます。

例えば…

自宅(土地・建物)3,500万円+預貯金1,500万円+みなし相続財産1,500万円(死亡保険金3,000万-非課税分1,500万円(500万円×3人))-債務100万円-葬式費用400万円=相続総額6,000万円の場合

2.基礎控除を引き、課税価格の合計を出します

この場合、相続総額6,000万円-基礎控除額4,800万円(3,000万円+600万円×3人)=相続税がかかる金額1,200万円

3.相続人ごとの税金がかかる額を出す

今回は民法の「法定相続分」に従い1,200万円を配偶者1/2、長男1/4、長女1/4の分け方で計算します。

よって、課税価格は、配偶者600万円、長男300万円、長女300万円となります。

4.相続税額を出す

課税価格により、相続税の税率と控除額は異なります。今回の課税価格は3人とも1,000万円以下なので、税率は10%、控除額はなしとなります。

相続税額…配偶者600万円×10%=60万円、長男300万円×10%=30万円、長女300万円×10%=30万円となります。したがって相続税の総額は120万円となります。

5.相続割合で分け、控除を引いて納税額を出す。申告と納税をする。

配偶者…相続税の総額120万円×1/2=60万円※

※配偶者控除が適用され、取得した財産が1億6000万円以下か、法定相続分以下なら相続税はかかりません。従って配偶者の納税額は0円になります。ただし、相続税がかからなかったとしても、申告をする必要があります。

長男(21才)…120万×1/4=納税額30万円になります。

長女(18才)…120万円×1/4=30万円※

※未成年者控除が適用され、20歳になるまでの年数に応じた控除があります。控除額=10万円×(20歳-相続人の年齢(今回のケースは18歳))=20万円

したがって長女の納税額は30万円-20万円=10万円となります。

※基礎控除を引いたあとに遺産総額がプラスになったとしても、税額控除や税額軽減が適用されることがあり、納める税金が少なくなったり、支払わなくてもよい場合が多くなります。

今回紹介した「配偶者控除」や「未成年者控除」以外に、「障害者控除」「贈与税額控除」「外国税額控除」「相似税額控除」「小規模宅地の特例」など合わせて7種類の税額控除・軽減特例があります。

まとめ

今回は遺産分割協議書作成や遺言書の作成をするうえで、知っておいた方がよいと思われる相続税のしくみの基本について簡単に説明させて頂きました。思った以上に複雑な仕組みだと思われた方も多いと思います。ただし、相続財産の総額が3,600万円を超えなければ、相続税の申告と納付を行わなくてもよいことは頭に入れておくとよろしいかと思います。相続財産が3,600万円を超える場合やどうしても生きているうちに財産を家族に贈りたい場合は贈与税のしくみについて学ぶ必要があると思います。

今後贈与税の基本的なことについても説明させて頂きたいと思っておりますが、各種税金の詳細や申告・納税の手続きに関しては税理士さんに相談することをお勧めします。

当事務所では、遺言書の作成や遺産分割協議書の作成のサポートをさせて頂いております。もし、手続き等で分からないことがございましたら、気軽にお問い合わせください。